slide 2

城田清弘

街を俯瞰したいという欲求にかられている。

最近の高層マンションはだめ。ガラス張りのエントランスは施錠され、裏の駐車場、非常階段、いたるところに防犯カメラが見張っている。狙い目は70年代の10階建くらいのマンション、1階に公共施設やスーパーなどが入っているならなお良し。セキュリティという考えがなく住民以外の人間が難なく入れてしまう。

原町上空30mからの眺め。仙台の中心部のビル群、真下は迷宮になっている清水沼の住宅地、新幹線を越えてJRの車両基地、都市ガスのタンク、梅田川が海に向かって流れ4号線バイパスが霞んで見える。不意に鉄のドアが開き、ゴミ袋片手にランニング姿で現れたおっさんは、フィルムチェンジをしている私を、何も見なかったように通り過ぎていった。

Exhibition

2013.9.3 tue – 9.8 sun

SARP A

EVENTS

仙台写真月間 2013 アーティストトーク 
9月7日(土)

ゲスト  森忠治(もり ちゅうじ)
舞台芸術プロデューサー/ワークショップデザイナー 1976年宮城県生まれ。仙台を拠点に全国で現代演劇を上演するカンパニー『三角フラスコ』のプロデュースを手がけるとともに、『満塁鳥王一座』(福島) や『二番目の庭』(北九州)『時間堂』(東京)『ロロ』(東京)など、他地域を拠点とするカンパニーの仙台公演をサポート。ワークショップの企画やファシ リテーションも行う。仙台市公民館運営審議委員/せんだい短編戯曲賞ディレクター/せんだい舞台芸術復興支援センター事務局長

Installation images

slide撮影ノート

河口近くの平野生まれの私にとって、地理の教科書でしか見たことがなかった河岸段丘、実際に住んで暮らすとなると、かなり不便なことがすぐにわかる。北山から段丘を数段下り、澱橋を渡ってまた段丘を自転車でのぼる毎日。自転車生活をしていたため、起伏というものに敏感になる性質が培われていったと思う。

大学の1年生の授業(いわゆる一般教養)のなかで一番印象に残っているのは、「地域と環境B」、呼び方をかえただけで「地学」の範疇に入ると思う。理学部地学科の助教授の先生が受け持っていて、目を輝かせながら、「仙台はフィールドワークにとって最適な土地なんです」と。広瀬川と河岸段丘の成立はもちろん、竜ノ口で化石掘りができ、最大のイベント、約3万年前の流路変更。もともと向山を通って愛宕山と大年寺山の間を抜け、越路あたりから広瀬川に合流していた、と言われても土地勘のない者にとってはよくわからない。仙台一高出身の子が大きく納得していたのがうらやましかった。
長町-利府断層帯については、100万人都市のど真ん中を活断層が横切っていて、おもしろい街なのだそうだ。鹿落坂(ししおちざか)断層についての語りは、特に鮮明に記憶している。鹿落坂を登り切ったところ、ちょうど鹿落旅館、その真下の広瀬側の崖に断層が露呈しているそうで、どう考えても対岸の街側にも断層は繋がっているだろうと。ちゃんとした調査はしていないが、「藤崎百貨店のあおば通側から入ったら短いエスカレーターがあるでしょ、それだと思うんだけどなぁ。今度いったらよく見ておくように」、なんて。

1998年、愛子付近を震源とするM5.0の地震。最初は愛子断層が動いたかと言われていたが、余震の調査で長町ー利府断層の最深部で起こった地震だと、地震学の授業で取り上げられた。長町ー利府断層で地震が起こるかもと世間は騒いでいたはずなのが、自分の中では、東照宮の骨董市で買ったガラスのコップが割れた、ということでその一連の地震を記憶している。

2010年、若林区六十人町に引っ越しをした。仕事場は地下鉄「北四番丁」近くなので自転車で通うとなると、必ず長町ー利府断層の坂道を通過することになる。さまざまなルートを画策してみたが、この坂道はどうしても避けられない、坂道をなくするためには、地形を改変して仕事場まで土地を10数メートルの厚さで削ればいいとわかったとき、自分の無力さを思い知らされた。

2011年から現在。原発の再稼働をめぐって「活断層」は注目し、その危険が議論されている。仙台でも長町利府断層で地震が起こった場合のハザードマップを作成(2008年)していて、図書館やHPなどで公開されていることを知った。断層に対して東側(下側)で建物に被害が大きくなるようで、自宅付近は最大危険度(全壊率30%以上)の真っ赤であったが、それを知ったところで、にわかに引っ越そうとは思わなかった。

※長町-利府断層帯
長町-利府断層、大年寺山断層、鹿落坂断層、坪沼断層及び円田断層を一括した総称。 長町-利府断層 は、仙台市から利府町にかけて、ほぼ南北に延びる長さ約40kmの活断層。この断層は、約3000年に1度程度の割合で発生していると考えられ、予想される地震の規模はマグニチュード7.0から7.5程度で、今後30年以内に発生する確率は、1%以下と考えられている。